医者 またいらしてたんですか?
男 また?
医者 ええ、しょっちゅう仕事を抜けだして来るんですよ。この人。
若い女 リストラされないのが不思議ね。
おっさん ああ、俺もそこが不思議なんだ。
男 ちょっと、待って下さい。こちら、先生じゃ?
医者 違いますよ。
男 え、だってバラエティに富んだって。
医者 この方は違います。
おっさん 富井です。始めまして。
男 え、じゃあ、こちらの女性は?
若い女 あ、私はここの事務員ね。
男 …そんな。てっきり先生だと。
医者 何か大切なこと話されたんですか?
男 いえ。
おっさん 大丈夫だ。この人の好きだったTVの話をしてただけだ。
医者 それなら良いですけど、紛らわしいことは止めて下さいよ。
おっさん へい。今後は。
医者 すみませんでした。ちゃんと話しておけば良かったですね。
男 いえ、良いんです。別に話してて楽しかったですから。
おっさん 悪かったな。青年。
男 …あの、富井さん。ひとつお聞きしてもよろしいですか?
おっさん なんだ、あらたまって。
男 お仕事、副部長ですか?
おっさん は?
男 あ、いえ、なんでもないです。忘れて下さい。
おっさん 訳分からんな。
医者 とにかく、富井さんも自分の仕事場に戻って下さいね。ここは職安じ
ゃないんですから。
男 ブラックですね。
おっさん へい。
医者 ほら、あなたも。
若い女 はーい。
男 あ、先生。そう言えば先生が。
医者 はい?
男 いや、あの、インディアンの。
医者 ああ、ボブが何か?
男 ボブさんっていうんですか?
医者 はい。紹介しませんでしたか?
男 いや、初めてです。
医者 じゃあ、今紹介しましょう。ボブって言います。
男 はあ。
医者 ボブが何か?