ミユ スイゲンは川の始まりなんだから、川のあとを登って行ったらいいのかな?よーし…
男の子 ねえ…。
ミユ ?
男の子 お兄ちゃん、探してきてくれないかな?
ミユ お兄ちゃんいなくなったの?
男の子 水源に行ったんだ。でも、戻ってこないんだ。
ミユ あなた、探しに行かないの?
男の子 いったさ、何回も何回も。でも全然見つかん無くて、それで、お母さんに「もう外に出
たらダメだって。」
ミユ …。
男の子 だから、探してきて欲しい。
ミユ …分かった、それなら直のこと、スイゲンにいかないとね。
男の子 ありがとう。
ミユ じゃ。
男の子 あ…。
ミユ 何?
男の子 村を抜けて少し行くと森があるんだけど。
ミユ うん。
男の子 そこ、悪い精霊がいるから気をつけて。
ミユ セイレイ?セイレイってなに?
男の子 なんていうかな?妖精みたいなものなんだけど。
ミユ ヨウセイ?ヨウセイってホントにいたんだ。
男の子 うん。いるよ。
ミユ へー、楽しみだなあ。
男の子 楽しみじゃなくて。
ミユ はい。
ミユ それじゃあ、行ってくるね。
男の子 あ、村の出口まで送るよ。
ミユ ありがとう。
村娘、ミユ出て行く。
精霊の森。
ミユ ここが、あの子の言ってた森かあ。
ミユ、森に入っていく。
ミユ 薄暗いなあ。
精霊達の声が響き始まる。「帰れ。」「帰れ。」「帰れ。」…
ミユ あ、これがセイレイさんか。おーい、セイレイさん。私は帰らないよ。
ミユ、先に進んで行く。森を出るがそこは入り口である。
ミユ あれ?ここ…。
精霊 「お前はこの森を抜けることはできない。」「ずっと、森の中をさまよいつづけるがい。」
「そう、一生だ。」
ミユ えーい。チクショウ!
ミユ、走る。しかし、森の入り口。
ミユ あー、やっぱりだあ。
精霊 「あきらめろ、あきらめて帰れ。」「ムダムダ。」「ダイエットにはもってこいかな?」
ミユ なによ!失礼しちゃうわね。
精霊 「どうせ、お前もチョコが目的だろ。」「この、ぽっちゃり予備軍。」「ブサイク。」
ミユ ブサイクとはなによ!これでもクラスじゃカワイイ方なんだから。
精霊 「所詮は“方”レベルだろ?」「5段階表かじゃ3Aぐらいだろ。」「この平均人間!」
ミユ もー、アッタマきた。そっちがそういう気なら、こっちにも考えがあるんだから。
精霊 「え?」「なんなの?」「なんだって?」
ミユ …わざわざ、森の中通らなくても、森の外側を通って行ったらいいんだから。
精霊 「は?」「ちょっと。」「そんな。」
ミユ それじゃあ、バイバイ。
ミユ、森の外側を歩き出す。
精霊 「あ、おい。」「ちょっと、待てよ。コラ。」「俺達の立場考えて行動しろよ。」
ミユ そんなの知らないもん。
精霊 「“もん”じゃなくてね。実際。」「俺達も森の中通ってもらわないと困るんだよ。」「僕達のアイデェンティティのために。」
ミユ アイデェンティティってなに?
精霊 「バカ!バカに難しい言葉を使うな。」「そうだ。バカ。」「ああ、ごめん。あのねアイデ
ェンティティって言うのは…。」
ミユ それじゃ。
精霊 「あーうそうそ。賢い。めっちゃ賢い。」「うん、100点満点。」「利口利口。」
ミユ 利口?まあ、いいか。
精霊 「じゃあさ、気を取り直してさ。」「もう1回、森に入ろうよ。」「オマケするからさ。」
ミユ え?オマケって何かくれるの?
精霊 「え。いや…」「よけいな、こと言うなよ。」「イテッ、腿コン。」
ミユ オマケないんだ。
精霊 「え、いやごめん。」「どうしたら、森に入ってくれるかな?」「なんでも言ってよ。」
ミユ とりあえずさあ、私の前に出てきてよ。
精霊 「え。」「僕達なら、ずっとここにいるよ。」「そうか、見えないんだ。」
ミユ うん。全然。
精霊 「じゃあ、僕達が出るようにするからね。」「君も見ようと思ってね。」「そうしないと見
えないんだ」
ミユ 見ようと思う?
精霊3 ハイ、出たよ。
ミユ まだ、見えない。
精霊2 見ようと思って。
ミユ うん、分かったやって見る。